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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1895年、グルジア
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臆病

 少し考える風に手を顎に当て、僕は答える。


「分かった、夕飯どきに説明するよ。それでいい?」

「ええ」


 でもこの演技はいらなかったかも知れない。

 こんな状態での念押しは、ともするとくどい。


「素直に話してくれるなら、今の私からは(・・・・・・)特に何も」

「……じゃあ決まりだね」


 その言葉を合図に、僕らは席を立った。

 何はともあれ、午後からの仕事が控えているからだ。


 これで考える時間が――と一瞬思ってはみたものの。

 実のところ、僕の意志は固まりかけていた。

 僕の背景を、ともあれ素直に話してみようと。


 ただしそれは、彼女にだけのことだ。

 僕の嘘を彼女が見抜くのなら、彼女の前では本当のことを言いさえすればいい。

 信用を獲得するために僕は、何一つ飾る必要はないのだ。


 何のことはない、する必要のない回り道を僕はとっていた訳だ。

 これを“お人好し”と呼ぶのは、やはり違うはずだ。

 その言い回しはたぶん、彼女の優しさに過ぎない。

 ならば、何なのか。


臆病者(トゥルス)、なのかな……」


 独りつぶやいてみる。

 おそらく聞こえたのだろうけど、彼女は反応しなかった。

 今は特に何も(・・・・・・)なのか、それとも本当に聞こえなかったのか。

 少なくとも今の僕にとっては、どちらでもいい気がした。

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