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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
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処遇

「それで、どうします?」


 当面の問題はそこだった。


「僕が間抜けにも正体を隠し損ねた、時間旅行者と仮定して(・・・・・・・・・・)、です。提督は、どうされます?」


「――どうする、とは?」


 問いに問いで返すのはどうだろう。

 そう思いつつ、いま上手くそれを咎めるのはむずかしい。


「そこは、とぼけなくても良いでしょう。もっとも、僕に何が出来るとも限りませんが」


 いったい僕に、何が出来ると言うのだろう。

 実際は時間旅行どころではない。

 僕の境遇は島流しに近い。

 10年ほど経てど、いまだ慣れることはない流刑。


「君は私を、そう言う目で見るのかね」


 少し傷ついたような顔で、提督。

 そんな顔もするのかと、やや意外に思う。

 ……いや違う、今まで僕が見なかっただけだ。

 今まで、うまく付き合えていただけで。


「君は親友がユダヤ人であったら、態度を変える類の人間なのかね?」


「……変える人間もいるのは存じています」


 欧州でも、このロシアでも。


「一般論じゃない。これは君に訊いている、君のことを訊いているんだ」


 まっすぐ、視線を合わせるように提督。

 どうにもここは、真面目に答えるべきなのだろう。


「――いえ」


 素直に、僕は否定する。


「率直に言えば、たいへん下らないことだと思います。ある属性だけで以て、何かしら態度を翻すのは。もっともらしい理由なら、後でいくらでも証明(・・)できるでしょう。――もちろんこれは、僕が不具の身だからもあるでしょうが」


 知らず知らず、左腕に力が入る。

 弱々しく、頼りない力が。


「少なくとも、僕は何もしません――僕が、提督の立場ならば」


 願望を込めて、言いながら。

 僕は第三帝国、伍長閣下のそれを思い出していた。

 40年近く後になる、地獄の沙汰を。

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