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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
264/350

一歩

「――ともあれ、です」


 分からないこととは別に、確定したこともある。


「ひとつ、確かなことは加わりました」


「それは何かね。無論気が向けばでいいが」


「僕の副業(・・)が、です」


 一瞬の間。

 次いでの真顔。


「今さらこう言うのも何だが……女傑直々のご友人に手紙の代筆を、と言うのもやや気が引ける」


 なるほど、どうやら間違いないらしい。

 彼女が提督に、一目置かれているのは。

 ――そして、相当に上手く食い込んでいるのも。


 歴戦の提督を、ともあれ信じさせる(・・・・・)能力。

 血縁でも利害でも、ましてや色香でもない。

 おそらくは、純粋に能力でもって。

 一国の、命運を任されるに足る提督を。


「ご心配なく。その位でしたら、手間賃の内です」


 内心、ひとり、僕は笑う。

 それはそうだろう。

 ますますもって、面白い(・・・)のだから。


「彼女は十中八、九の確信を持って、提督に手紙を渡したんでしょう。その信頼に答えて頂いた、これはだから、お礼みたいなものです」


 あまりにもささやかな礼ではある。

 それでも、何もなしには気が済まなかった。


「分かった。受けるとしよう」


「ありがとうございます」


「ついでと言っては何だが――ひとつ、訊ねてもいいかね」


「何なりと」


 このひと言は、やや迂闊だった。


「――この船は、いや艦隊は、地球を半周できるのかね」


「ええ、僕の予測でしたら――」


「いや、そうではない」


 一度首を振ったその後で。

 少しだけ、思い詰めたような表情がのぞける。


「私が聞いているのは、史実ではどうか(・・・・・・・)と言うことだよ」


 不意をつかれ、一瞬僕は言葉を失う。

 ――彼女が? いやまさか。

 内心を押し隠したつもりで、僕は答えていた。


「言われている意味が、よく分かりませんが」

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