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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
263/350

根拠

「提督を信じたいのは山々です。けれども仰る通りだ、この手紙が開けられていないとの根拠は薄い――でも」


 確かめるように、僕は言う。


「でも、この手紙の内容によっては、それが分かる」


「――言ってる意味が分からないな。君の考え過ぎにも見えるが」


「正直、僕もですよ。一体どう言う発想なんだか――ひとまず、開けてみましょう。念のため聞いておきますが、送り主は一人でとは指定していない、ですよね?」


「ああ」


「ならこの推測は、今の時点で半分当たってるはずです」


 手紙を取り出し、開いてみせる。

 冒頭に見えるはж(J)の文字。

 すなわち、ジョゼファのJだ。


 ……内容はそう多くない。

 ただ、戻っては来ないかとの誘いだった、とだけ言っておこう。

 重要な中身かと言えば、その通りだ。

 特にそれが、仲良からざる組織の構成員――僕に宛てた文言なら。

 だがこの場合、もっとも重要なのは。


「見せてよかったのかね?」


 その疑問はもっともだ。

 どうしたものだろう。

 わずかに考え、僕は言う。


「ええ。提督を信用して、では信じてもらえないですか」


「秘密の手渡しに免じてでは、説明してもらう理由としてダメかね?」


 そう言われると、こちらとしても不義理はしがたい。

 秘密を、秘密のままに運んでくれたのは確かなのだから。


「――信用のダメ押し、です」


 恐らく、ここまでは間違っていない。

 間違ってはいないはずだけど。


「たぶん、最初の取り引きはジョゼファに言われたのでしょう」


「と言うと?」


「代筆の話ですよ……あれは、この中身の代償にしては軽すぎる。釣り合ってない」


 しかしながら、単に手紙を運ぶと言うだけなら十分に釣り合う。

 そこに、秘密の保持が含まれていないなら。


「――なるほど、私が中を見なかったらしき(・・・)ことは推測できそうだ。君にとって、私の信用は上がったのだろう……だが、何のために?」


 その問いもまた、もっともだ。

 そして、その問いには。


「――分かりません」


 素直に、僕は答える。

 その場しのぎの嘘はつかないこと。

 長期的な取り引きには重要なことだ。

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