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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
262/350

開封

 簡素な椅子に座り、目の前の机へ、手紙を置く。

 提督もまた、次いで備え付けの椅子に腰掛ける。

 手紙を挟み、お互い向き合う形だ。


「ナイフ、お願いできますか」


「ああ」


 差し出されたナイフを両手で受け取ると、左手に持ち替える。

 右手で机の上の手紙をおさえ、左手に持ったナイフで、端から封を切る。

 一息に紙を裂く、短く小さな破裂音。

 封筒をしっかり固定さえしていれば、僕の左腕でもそうむずかしくはない。


「ありがとうございます」


 ナイフを提督に返し、早速、手紙の中身を見る。

 目に入ったのは冒頭、ж()の文字。


「――はは」


 なるほど、とようやく思う。

 何かの場合も、差出人は察せるとの工夫。

 そして一度目に入ったなら、最後まできちんと読ませるとの工夫……彼女(・・)らしい書き方だ。


 僕は手紙を一度しまい、提督に向き合う。


「どうしたかね? 私が邪魔なら――」


「いえ、そうではないです。ただ、確認しておきたいことがありまして」


「内容にもよるが」


「そう大したことではないです。ただの確認、本当は騒ぐほどの程のことじゃない」


「ならば何故、そう食い下がる?」


 これには、少しだけ考え込む。

 今この感情を、果たしてどう表したものだろう。

 とりあえずの結論を、僕はひねり出す。


「――意地でしょうか。僕の考えが合っているのかどうか、確認できるものならそうしておきたい」


「なるほど――あまりいい癖とは思えないが、分からなくもない。まずは聞こう」


「お気遣いは受け取っておきます。では」


 一拍を置き、僕は続ける。


「提督は、差出人をご存知なんですね?」


「無論」


「そして、この中身を知らない」


「それも無論、と言っておこう。もっとも、証拠に乏しいのは認めざるを得ないがね」

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