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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
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「で、どうするかね?」


 決断を延ばすでも、急かすでもない。

 それは、ごく普通に尋ねる口調だった。

 提督にしてみれば、急いで応諾(ダー)の捺印を押させたいはずなのだけど。


 急造の帝国艦隊を引き受けた、壮年の提督。

 僕よりはるかに忙しいに決まっている職務。

 このやり取りにしても、貴重な時間を使っていると想像はつく。

 つまるところこの念押しは、提督なりの好意にほかならない。


 まず間違いなく、甘い(・・)のだろう。

 提督も、おそらくはこう想像してしまえる僕も。


「――開けます」


 できる限り静かに、僕は応える。


「その手紙を、今ここで」


「私としては、今ここである必要はないが……確かかね?」


 誰にでも分かる最終確認。

 中身を把握しているかどうかは、この言い回しでは決められない。


はい(ダー)


 一度頷いてから、僕は応える。


「読みます」


「承知したよ。では、渡そう」


 手紙は改めて、僕の元へ差し出される。

 右手で受け取り、僕はそのことに気づく。


「失礼、ハサミかペーパーナイフはありますか?」


「部屋にならあるが」


 提督も、同じことに気付いたらしかった。


「……なるほど、その左手では開けづらいな」


 そこまでは気づかなかった、と言う顔。

 もっとも、それは気遣いのし過ぎというものだろう。

 あらかじめ開封してあったなら、僕の考えはまた違ったものになっていたはずだ。


 ――あるなら、自分で取りに行きますよ。

 そう言いかけて、今度はお互いの立場に気づく。


「ちょっと場所を変えませんか? もちろん、僕一人で行ってもいいですが……」


 できれば、一人では遠慮したいところだ。

 余計な疑いを持たれる行動など、避けるに限る。


「お互いのためだ、私も行こう」


「では、アルコールはどうします?」


 この冗談には、苦笑だけが返って来た。

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