表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
256/350

模索

 こちらにだけ利得の生じる提案。

 そのことを、提案者は確実に把握している。

 そこに無自覚なほど、楽な相手でもない。

 ならば、その意とは何だろう。


「……降参です」


 軽く笑いながら、僕は言う。

 少し悔しくはあるけど、表には出さなかった。

 理屈ではない、ただの意地の問題。


「――条件(・・)をお聞かせ下さい」


 分からないなら、聞けばいい。

 それも、できるだけ直截に。


「と言うと?」


「こちらがほとんど一方的に得をすることを持ちかけていて、かつ提督は明らかにそう知っている。ならば今まだ切られていない手札、何がしかとの引き換えと考えるのが自然でしょう。それが何なのか、僕は知っておきたい」


「ふむ」


 提督は顎に右手をあてる。

 その右手が、今度は胸の内に伸ばされる。


「――手紙を預かっていてね」


 目の前に取り出されたのは、封書。

 テーブルに置かれたそれは、何の変哲もない。

 と言うより、宛名さえ書かれてはいない。

 使われている純白の紙から、わずかに書き手の境遇を察せるだけだ。


「こいつを、君に読んでもらわないといけない」


「さほど長いものとも思えませんが」


 見る限り、封書は普通の厚さでしかない。

 入念に読んだとして、そう時間をとるでもないだろう。


「あるいは、続きの大長編でも?」


「それは無いな。そうでないことは、間違いなく約束しよう」


 となると、だ。

 あとは、どんな可能性があるだろう。


 長くはないが、読ませないとならない類の手紙。

 ひとつ、内容がろくでもない可能性。

 ひとつ、差出人がろくでもない可能性。

 特に差出人は難題だ。

 提督が帝政ロシアの提督である以上、ほとんどあらゆる可能性が考えられる。


 ――面白い。あらためて、僕は思う。


 だが面白過ぎるとなると、話は少し変わってくる。

 火遊びの面白さには、危険もまたつきものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ