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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
255/350

誤解

 誤解かも知れない。

 買いかぶりかも知れない。

 あるいは――。

 言い出せばキリがない。

 けれども。


 ――たとえそうであって、何の不都合があるだろう?


 誤っていたときの咎は、各々が背負うだけのことだ。

 恨むでも嘆くでもない。

 ただそれだけのこと、それ以上でも以下でもない。


 信じ過ぎず、と言って疑いも過ぎず。

 つまるところ僕は、かなり気に入っているのだろう。

 目の前の、相対する提督を。


「では、本題に入るとするかね」


「ええ」


 頷き、僕は先を促す。


「面白い話だと、うれしいですね」


 それが興味深い者の話しとあれば、文句の付け所がない。

 これはだから、ただの本音だ。


「ああ」


 提督も応える。

 軽く右目を閉じての、不敵な笑み。


私にとっては(・・・・・・)とても面白いことだよ。もっとも、君にとってどうかは分からないが」


「いいですね。その言葉だけで、既に面白い――どうぞ、続きを」


「代筆を頼みたい」


「……はい?」


「忙しいながら、妻子に手紙を出したくてね。その代筆を、しばらくお願いしたい」


 そのことは問題ない。

 口述筆記であれば対応できなくもない。

 問題は、当然その中身が筒抜けになることだ。

 そのことはもちろん、提督も承知の上のはずだ。


「それは――」


 手紙には必然、身内への近況も入ることだろう。

 そのなかには、こちらへのヒントの類も含まれてしまうはずだ。

 重要な情報だけぼかすのはむずかしいのだから。


 ほとんど一方的に、こちらに有利と見える取り引き。

 はっき言えば、その意図がつかめない。

 分からない以上、安易に頷く訳にもいかない。


「……僕でなくては、ダメなことなんですか?」


 そう返すのが、僕にはやっとだった。


「面白いだろう?」


 提督は直接答えない。

 ただ、いたずらっぽい笑みを返すだけだ。


「……なるほど」


 かろうじて、僕は言う。


「確かに、面白い(・・・)

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