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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
250/350

提督

「君がよければ、だが」


 口ひげを立派にたくわえた、禿頭の軍人。

 当年とって、もうすぐ56歳になるはずだった。

 ジノヴィー・ペトロヴィッチ・クリスマスロジェストヴェンスキー

 バルチック艦隊こと第二太平洋艦隊提督、その人だ。


 名前の長さもあって、下士官はいつも提督と呼んでいる。

 僕もまた、それに呼称を合わせている。

 たとえばジノヴィーなどと、馴れ馴れしく呼ぶ訳にはいくまい。


「見たところ、君の食事はもう片付きそうだ」


 僕はもう、コップにあと少しの水を残すだけだ。

 一方の、提督はどうか。

 紅茶ひとつにパン一皿を置き、僕の返事を待っている。

 つまるところ、今まさに小休止と言ったところ。

 あとの返事は僕次第と言う訳だ。


「ええ、その通りです」


 頷き、僕は答える。


「見たまま、僕の隣、今は(・・)空いてますよ――石炭がちょっと、居座ってはいますがね」


 急ぎの航海だ、船は石炭を山盛り積んでいる。

 石炭は石炭であって、そこから発生し散らばるススはいかんともしがたい。

 何度か拭ってみたところで、そこで終わるものでもないのだ。

 結局、あちこちは煤けたままでいる。

 羽根を伸ばす間もない航海に、黒く薄汚れた船内。

 これでは、船員の気分が上がろうはずもない。


「お望みでしたら、どうぞ」


「――では、失礼」


 言って提督は、目線で料理長に退出を促す。

 料理長にしても、ここで逆らう理由は特に無い。

 ほどなく、広くはない食堂に二人だけが残される。

 帝国海軍提督と、僕、見習い革命家とが。


「――話と言うのは、だ」

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