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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
249/350

人材

 帝政ロシアの人材。

 義務的な食事に手をつけながら、僕は考える。

 ――まず、誰はともあれ彼女(ジョゼファ)がいる。

 人材の範疇に収まるかどうかはともかく、ひとかどの人物なのは文句がないところだ。

 明晰と、時に鋭過ぎる洞察。

 血筋こそないものの、能力は申し分ない。


「……まずい」


 乾パンのすえた匂いをこらえつつ、僕は水に手を伸ばす。

 潤いの欠片もない、いかにも生命維持と言った行為。

 もっとも、流し込んでもしばらく、妙な味は残るのだけど。


 ――ふたたび、僕は思考へと沈む。


 血筋。

 平時にあっては大きな障壁も、今のロシアではそう問題じゃない。

 それなりの値をつければ、売る者はいくらでも現れる。

 それが混迷の時期、過渡期(・・・)のならいと言うものだ。

 その後に来るであろう影口程度、単に実績で黙らせればいいだけだ。

 影口は影口でしかなく、実績に勝ることなどありはしない。


 心のなかで、僕はもう二人を数え上げる。

 歴戦の軍人、アレクセイ・クロパトキン。

 老練の宰相、セルゲイ・ヴィッテ。

 彼女がこの辺りと現場をつなぐようであれば、僕の方の勝ち目は薄い。

 事前に日本の軍事力を見抜いたクロパトキンに、戦後(・・)の交渉を有利に進めたヴィッテ。

 少なくともまだ、主な首脳部の目は曇ってなどいないからだ。


 こうして考えると、ロシアも悪いものではない……ひとり、()の問題を除くならば。

 頭。すなわち、皇帝。

 帝政ロシア、その最後となるはずの。

 挙げたヴィッテにしても、今はまだ謹慎を命じられているはずだった。


 干し肉を残りの水で飲み込み、さらに考えを巡らせる。

 当艦隊の航海が前途多難なのは疑いようがない。

 新旧交えた船に、練度の足りない兵士たち。

 それでも、僕のいる現場(・・)は、指導層はそう悪くないのだ。

 この船にしても――


「――隣、空いてるかね」


「提督」

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