ふた皿目・8
砂糖を水で溶き、ミニサイズのフライパンで火にかける。
こげ茶色になったところに水を足し、しばらく冷ますとカラメルソースが完成する。
「じゃがいも、できたぞ」
ほぼ同時に、すり下ろしたじゃがいもも大量に来る。
その後は。
「じゃあ、それをガーゼで絞ってもらえるかな」
「このじゃがいもを、か?」
「うん。ボウルに水を入れて、それに浸しながらね。念入りに頼むよ」
「――了解」
言いながら、僕はもうひとつ、大きめの鍋を用意する。
ついでに、今から使う木べらも。
「……これもまあ、僕じゃ厳しいかな」
僕の記憶が確かなら。
これからの作業は、それなりに力がいるはずだ。
「もういいぞ」
「ああ、おつかれ」
差し出されたじゃがいも入りガーゼには見向きもせず、僕はボウルを見る。
底に沈殿した、白い濁り。うん、これなら大丈夫そうだ。
「いいね」
「これは、いらないのか?」
困惑顔の彼へ、さすがに言葉をかける。
「それはひとまず、脇にどけておいて。それより、もう少しいいかな」
「あ、ああ。だが何を?」
「そのボウル」
一拍だけ置き、僕。
「上澄みは半分くらい捨てて、よくかき混ぜたら火にかけてくれるかな。鍋はここに」
フランスにもロシアにも無いはずの手順だ、困惑しても無理はない。
それでもコトの最中、無闇には訊ねてこない。
控えめに言って、これは使える類と見ていいだろう。
決して悪くない資質だ。
――資質? いったい何の?
浮かびかけたその問いを、僕はかき消す。
目の前で、鍋の半分ほどが、白い水に満たされていく。
「うん、そのまま、かき混ぜて」
「どのくらいだ?」
「時間? それとも力?」
「両方、頼む」
少しだけ考えてから、僕は答える。
「時間は10分ちょっと、かな? 今はまだ楽だけど、その内に力が要るようになるよ」
「――了解」




