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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
241/350

ふた皿目・8

 砂糖を水で溶き、ミニサイズのフライパンで火にかける。

 こげ茶色になったところに水を足し、しばらく冷ますとカラメルソースが完成する。


「じゃがいも、できたぞ」


 ほぼ同時に、すり下ろしたじゃがいもも大量に来る。

 その後は。


「じゃあ、それをガーゼで絞ってもらえるかな」


「このじゃがいもを、か?」


「うん。ボウルに水を入れて、それに浸しながらね。念入りに頼むよ」


「――了解」


 言いながら、僕はもうひとつ、大きめの鍋を用意する。

 ついでに、今から使う木べらも。


「……これもまあ、僕じゃ厳しいかな」


 僕の記憶が確かなら。

 これからの作業は、それなりに力がいるはずだ。


「もういいぞ」


「ああ、おつかれ」


 差し出されたじゃがいも入りガーゼには見向きもせず、僕はボウルを見る。

 底に沈殿した、白い濁り。うん、これなら大丈夫そうだ。


「いいね」


「これは、いらないのか?」


 困惑顔の彼へ、さすがに言葉をかける。


「それはひとまず、脇にどけておいて。それより、もう少しいいかな」


「あ、ああ。だが何を?」


「そのボウル」


 一拍だけ置き、僕。


「上澄みは半分くらい捨てて、よくかき混ぜたら火にかけてくれるかな。鍋はここに」


 フランスにもロシアにも無いはずの手順だ、困惑しても無理はない。

 それでもコトの最中、無闇には訊ねてこない。

 控えめに言って、これは使える類と見ていいだろう。

 決して悪くない資質だ。


 ――資質? いったい何の?


 浮かびかけたその問いを、僕はかき消す。

 目の前で、鍋の半分ほどが、白い水に満たされていく。


「うん、そのまま、かき混ぜて」


「どのくらいだ?」


「時間? それとも力?」


「両方、頼む」


 少しだけ考えてから、僕は答える。


「時間は10分ちょっと、かな? 今はまだ楽だけど、その内に力が要るようになるよ」


「――了解」

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