予期
どこで“小さな嘘”をつくべきなのか。
それはどうあるべきなのか。
そこまで追い込まれて、僕はようやく、思い違いをしている可能性に気付く。
「一応、聞きたいんだけど」
「ええ。何?」
「これを言い出したのは誰なのかな?」
「と言うと?」
「つまり、その、僕のための集会なんだけど」
今日の村の様子におかしなところはない。
少なくとも僕には、僕への敵意や不信は感じられなかった。
ならば、この査問を企んだのは誰か?
もしかしたなら、いざと言うときへ機先を制するための、彼女の配慮ではなかろうか。
「私が言い出したの。この先何があるか分からないでしょ」
僕は、いや、僕だけは知っている。
大陸と島国との終戦条約は、いずれ大国の干渉を生む。
干渉はまた、次の戦争を呼ぶだろう。大国と島国の戦争を。
そこに至る戦間期の緊張に、正体不明のよそ人は滞在を許されるだろうか。
一瞬だけ、何かいやなものに触れた気がした。
そして僕はようやく、別のことに気付く。
彼女が看破した、僕の嘘についてだ。
ひとつは、本当に僕の嘘が下手な可能性。
もうひとつは、彼女の察し方が凄まじい可能性だ。