ふた皿目・6
「――いや、こう考えてるばかりじゃ仕方ないね」
「なら、どうする?」
「ひとまず、手を動かすよ。材料は被るけど、じゃがいものパンケーキでも作ろうと思う」
たぶん、冷蔵庫にバターはあるはずだ。
小麦粉と砂糖以外にも、何かあるだろうか。
諸々の確認を兼ねて、僕は頼む。
「あの冷蔵庫だけどさ、中に何があるか教えてくれないかな?」
「全部か?」
「そうだね……いや、甘い奴か、合わせるのに使えそうなものだけで。逐一じゃなくて、確認して一度に頼めるかな。メモと鉛筆は、冷蔵庫横の棚にあったと思う」
「了解」
冷蔵庫に向かう彼をよそに、手を動かすことにする。
まずは包丁でじゃがいもの皮をむき、すり下ろすべく二等分していく。
4つ作業を終えて、あたりが何とも見苦しくなっていることに気づく。
気づいてしまうとどうにも落ち着かない。ともあれ、この皮だけでもどうにかしないと。
「ええっと、流し場は、と」
じゃがいもの皮たちをいったん除けるべく、僕は流し場に向かう。
「――あれ?」
流し場には、妙なものが残っていた。
金属製のボウルに入った、白く濁った水。
上の方はやや透き通っていて、下に行くにつれて白みが増している。
普段の僕なら、そのまま捨てるであろう水だ。
けれども。
「この水は……」
「ああ、捨て忘れてたな。済まない」
振り向くと、メモを片手に彼。
こちらの手際もなかなかのようだ。
「終わり?」
「後は報告だけだ」
「ご苦労様。とりあえず、目の前のことからいいかな?」
言って僕は、流し台に視線を向ける。
流し台の、ボウルの中の水に。
「これは何?」
「忘れてたのは――」
「いや、僕の言い方が悪かった、責めてる訳じゃないんだ。ちょっと引っかかってね……」
「何が?」
「この白く濁った水が何か、だよ」




