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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
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ふた皿目・6

「――いや、こう考えてるばかりじゃ仕方ないね」


「なら、どうする?」


「ひとまず、手を動かすよ。材料は被るけど、じゃがいものパンケーキでも作ろうと思う」


 たぶん、冷蔵庫にバターはあるはずだ。

 小麦粉と砂糖以外にも、何かあるだろうか。

 諸々の確認を兼ねて、僕は頼む。


「あの冷蔵庫だけどさ、中に何があるか教えてくれないかな?」


「全部か?」


「そうだね……いや、甘い奴か、合わせるのに使えそうなものだけで。逐一じゃなくて、確認して一度に頼めるかな。メモと鉛筆は、冷蔵庫横の棚にあったと思う」


「了解」


 冷蔵庫に向かう彼をよそに、手を動かすことにする。

 まずは包丁でじゃがいもの皮をむき、すり下ろすべく二等分していく。

 4つ作業を終えて、あたりが何とも見苦しくなっていることに気づく。

 気づいてしまうとどうにも落ち着かない。ともあれ、この皮だけでもどうにかしないと。


「ええっと、流し場(シンク)は、と」


 じゃがいもの皮たちをいったん除けるべく、僕は流し場に向かう。


「――あれ?」


 流し場には、妙なものが残っていた。

 金属製のボウルに入った、白く濁った水。

 上の方はやや透き通っていて、下に行くにつれて白みが増している。

 普段の僕なら、そのまま捨てるであろう水だ。

 けれども。


「この水は……」


「ああ、捨て忘れてたな。済まない」


 振り向くと、メモを片手に彼。

 こちらの手際もなかなかのようだ。


「終わり?」


「後は報告だけだ」


「ご苦労様。とりあえず、目の前のことからいいかな?」


 言って僕は、流し台に視線を向ける。

 流し台の、ボウルの中の水に。


「これは何?」


「忘れてたのは――」


「いや、僕の言い方が悪かった、責めてる訳じゃないんだ。ちょっと引っかかってね……」


「何が?」


「この白く濁った水(・・・・・・)が何か、だよ」

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