ふた皿目・5
「もう少し、広い目で見てみるよ」
――つまり、だ。
メインがカジュアルなフランス料理だからと言って、他のものまで国籍を合わせる必要はないということ。
合うか合わないかは、単に料理の相性だけで決めればいい。
書いてもいないルールに縛られる必要は、確かに、どこにもないはずだ。
「と言っても、限度はあるだろうけど……」
時間、材料、相性。
それらを考えると、既存の組み合わせには一日どころでない長がある。
その土地ならではの蓄積。
料理に限らず、それらの雛形に真っ向から挑むつもりなら、いろいろと留意する必要はある。
無意味に敵視した挙句の失敗なら、いっそやらない方がましかも知れない。
「そんなに、むずかしいのか……?」
「うん」
比較的素直に、僕はうなづく。
ここで知識格差を嘲ったり、強がって見せても仕方がない。
「デザートにひと皿を使う、アイデア自体はいいと思う」
ただし、だ。
誰もやっていないはずの事には、無論それなりの理由がある。
「ただ、ね。考えてみればみるほど、制限がきつい」
「時間、か――」
「時間も、だね」
考えを整理しながら、僕は言う。
「材料も手法もルールも、結構きびしいね。用意された材料は、最初からお菓子なんか想定してない感じ。飾り付けの果物は無くもないけど、さすがに芸がない。と言って、材料の持ち込みは禁止。お菓子なんて、下手にレシピいじったらダメになる料理の典型だからね……」
「なら、考え直す方がよくないか」
「うん。いっそそうした方が、いいのかも知れない――でも、そう決めるにはまだ時間がある」
あまり考えなくてもいいのなら。
取り繕う方法は、いくらでもある。
単に、ごく普通のメイン料理を作ればいいだけだ。
そうしたところで、責められる筋合いは無い。
無いのだけど。
「感触としては、今のところ五分五分、てところだね……」
こう考えている内にも、時間は過ぎていく。




