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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
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ふた皿目・5

「もう少し、広い目で見てみるよ」


 ――つまり、だ。

 メインがカジュアルなフランス料理だからと言って、他のものまで国籍を合わせる必要はないということ。

 合うか合わないかは、単に料理の相性だけで決めればいい。

 書いてもいないルールに縛られる必要は、確かに、どこにもないはずだ。


「と言っても、限度はあるだろうけど……」


 時間、材料、相性。

 それらを考えると、既存の組み合わせ(テンプレート)には一日どころでない長がある。

 その土地ならではの蓄積。

 料理に限らず、それらの雛形に真っ向から挑むつもりなら、いろいろと留意する必要はある。

 無意味に敵視した挙句の失敗なら、いっそやらない方がましかも知れない。


「そんなに、むずかしいのか……?」


「うん」


 比較的素直に、僕はうなづく。

 ここで知識格差を嘲ったり、強がって見せても仕方がない。


「デザートにひと皿を使う、アイデア自体はいいと思う」


 ただし、だ。

 誰もやっていないはずの事には、無論それなりの理由がある。


「ただ、ね。考えてみればみるほど、制限がきつい」


「時間、か――」


「時間()、だね」


 考えを整理しながら、僕は言う。


「材料も手法もルールも、結構きびしいね。用意された材料は、最初からお菓子なんか想定してない感じ。飾り付けの果物は無くもないけど、さすがに芸がない。と言って、材料の持ち込みは禁止。お菓子なんて、下手にレシピいじったらダメになる料理の典型だからね……」


「なら、考え直す方がよくないか」


「うん。いっそそうした方が、いいのかも知れない――でも、そう決めるにはまだ時間がある」


 あまり考えなくてもいいのなら。

 取り繕う方法は、いくらでもある。

 単に、ごく普通のメイン料理を作ればいいだけだ。

 そうしたところで、責められる筋合いは無い。

 無いのだけど。


「感触としては、今のところ五分五分、てところだね……」


 こう考えている内にも、時間は過ぎていく。

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