ふた皿目・2
目の前に立ちはだかる難題。
わずかふた皿の料理で、こちらの思考を伝えること。
作り終えた肉料理と合わせることで、明示的なメニューを考え出すこと。
――どうすればいい?
こう言うときの僕は、どうにもひとり、思い出さずにはいられない。
あまり笑う質ではなかったけど、不敵な笑顔が似合っていたようにも思う。
彼女なら、いったいどう切り開いてみせるのだろう?
とにかく、自分のできる限りの技術をぶち込むのだろうか。
あるいはサラリと、課題をやってのけるのだろうか。
相方、と言ってよかったのだと思う。
こちらに飛ばされて10年。
その中の大半の歳月を、連れ添っていた半身。
我ながら、どうにも未練がましいことだ。
僕たちの道は一度別れた。
それでも、歩み続けてさえいれば、また会う日は来る。
そんな、よく分からない確信だけはあるのだけど。
ともあれ、だ。
歩みを続けるには、目の前の課題を片付けないといけない。
より正確には、目の前の課題に対し、及第点以上の答えを見つける必要がある。
落第点で拾われるようであれば、それは歩みを止めるに等しいのだから。
「弱ったね……」
「やはり、むずかしい課題か」
「いや、今弱ってるのは、そこじゃないね」
「――なら何の話だ?」
「昔の女の話さ」
目を丸くするノビコフ。
ある意味当たり前な反応が、何とも珍しいものにも思える。
そう、彼女なら、変化球に驚きもせず打ち返すだろう。
「ずいぶん、余裕なんだな……」
まあ、呆れられても仕方はない。
「そうでもないかな。思い出に浸るだなんて、心弱りの証しだよ」
「色男は辛いな」
「一途、と言って欲しいね」
「なら一途な色男、ふた皿目、どうする?」
突っ込むのはさすがに不毛だ。
わずかに間を置き、僕は答える。
「それも悩みどころだね」
「……言ってるあいだも、時間は経って行くぞ」
「交渉の余地はないのかな」
僕も考えてはいる。
考えてはいるけれど、妙案にはまだ至らない。




