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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
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ふた皿目・2

 目の前に立ちはだかる難題。

 わずかふた皿の料理で、こちらの思考を伝えること。

 作り終えた肉料理と合わせることで、明示的なメニューを考え出すこと。


 ――どうすればいい?


 こう言うときの僕は、どうにもひとり(・・・)、思い出さずにはいられない。

 あまり笑う質ではなかったけど、不敵な笑顔が似合っていたようにも思う。

 彼女(・・)なら、いったいどう切り開いてみせるのだろう?


 とにかく、自分のできる限りの技術をぶち込むのだろうか。

 あるいはサラリと、課題をやってのけるのだろうか。


 相方、と言ってよかったのだと思う。

 こちらに飛ばされて10年。

 その中の大半の歳月を、連れ添っていた半身。

 我ながら、どうにも未練がましいことだ。


 僕たちの道は一度別れた。

 それでも、歩み続けてさえいれば、また会う日は来る。

 そんな、よく分からない確信だけはあるのだけど。


 ともあれ、だ。

 歩みを続けるには、目の前の課題を片付けないといけない。

 より正確には、目の前の課題に対し、及第点以上の答えを見つける必要がある。

 落第点で拾われるようであれば、それは歩みを止めるに等しいのだから。


「弱ったね……」


「やはり、むずかしい課題か」


「いや、今弱ってるのは、そこじゃないね」


「――なら何の話だ?」


「昔の(ひと)の話さ」


 目を丸くするノビコフ。

 ある意味当たり前な反応が、何とも珍しいものにも思える。

 そう、彼女なら、変化球に驚きもせず打ち返すだろう。


「ずいぶん、余裕なんだな……」


 まあ、呆れられても仕方はない。


「そうでもないかな。思い出に浸るだなんて、心弱りの証しだよ」


「色男は辛いな」


「一途、と言って欲しいね」


「なら一途な色男、ふた皿目、どうする?」


 突っ込むのはさすがに不毛だ。

 わずかに間を置き、僕は答える。


「それも悩みどころだね」


「……言ってるあいだも、時間は経って行くぞ」


「交渉の余地はないのかな」


 僕も考えてはいる。

 考えてはいるけれど、妙案にはまだ至らない。

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