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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
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ひと皿目・2

 アスパラガスはあくまで添え野菜、大量に仕込むわけじゃない。

 湯を湧かした後は、すぐ茹で終わるだろう。

 それならば、だ。並行すべき作業は何か。


「僕は肉を焼くよ。そっちは、茹で終わったら揚げ油を熱しておいてくれるかな」


「温度は?」


「170度――ひとまず、ステックフリットにしようと思ってるけど」


「ステーキとフライドポテト(フリット)か。なら、こちらでジャガイモは切っておく」


「ありがと、助かる」


 手先の器用さを要求されることは、今はそう得意ではない。

 以前ならまだしも、僕の左腕は万全とは言いがたいのだから。

 下ごしらえの申し出はだから、かなりありがたい。


「厚さはどうする?」


 少しだけ考え、結論を下す。


「――小指より少し厚いくらいで」


「フリットにしちゃ分厚くないか?」


「うん。油の具合がよく分からないからね」


 道具の手入れから察するに、油の質は心配していない。

 フライにしてみても、胃がもたれることはないだろう。


 問題は、僕が揚げ物に不慣れということだ。

 油の性質がよく分からず、油用の温度計ももちろんない。

 こうなると揚げ物は、僕にとって不確定要素の塊ということになる。


 なのに作ると決めたのは、このメニューに不可欠だからだ。

 牛丼に味噌汁、ハンバーガーにフライドポテト。

 それら同様、ステーキとフライドポテトは定番中の定番なのだから。

 慣れ親しんだ味は、ときに技術の不備を補い得る。


 それに、分からないなりにも対処しようはある。

 低温度から長時間、じっくり油で揚げること。

 これならば、どんな腕であっても間違いが少ない。

 ジャガイモの表面はサクサク、中はホクホクに仕上がるはずだ。


「好みはあるけど、太めに切ってもらおうと思う」


「なら、鍋ももうひとつだな」


「うん? ええっと――」


 さも当然の表情に、僕は素直に訊ねることにする。

 この手の違和感は、できるだけ看過しない方がいい。

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