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距離
――僕の名はユーリ。この村は、狙われている。
――未来の世界の人型人間です。
僕の背景を正直に、ド素直に言ってしまうとどうか。
最大限好意的に見積もって、悪い人ではないんだけど枠。
控えめに言ってちょっと、お付き合いしたくない人だろう。
追放ならまだいい。幽閉だともう厳しい。
座敷牢、という単語が不意に頭をかすめる。
この街を出るには馬車を使うしかない。
無論、馬車を駆るのは顔見知り、使えるはずがない。
となると、ひとまず首都トビリシに出るには……まず150㎞はある。
長々とした山道の、それも徒歩での踏破。
無理なことは、シミュレートするまでもない。
ならば、どうするべきなのか。
全面的に断る選択肢はむずかしい。
愚かだ、と言いたければ好きに言ってくれ。
となると、だ。
結局僕に残されているのは、ささやかであれ嘘をつくことでしかない。
彼女曰く、決して上手くはないと言う嘘を。
どうやら僕は、嘘が上手くないらしい。
だから問題は、どこで小さな嘘をつけばいいのか、だ。