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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
229/350

ひと皿目

 メインの一皿目。

 その内容は、ほとんど決めていた。

 まずはジャガイモ。

 それに牛肉の塊肉を、1cm未満に薄く切って使う。


 薄切り肉のステーキに、細切りに仕上げるフライドポテト。

 ステーキの上には塩を振り、バターを添える。

 両方のソースに、小皿でマスタードも別に添えておく。

 いわゆる、ステーキ(スティック)フリットだ。


 ステックはフランス語、ステーキのことを指す。

 もちろんロシア料理ではない。

 フランスの、それも家庭の味。

 コック陣にはフランス出身者も多いと聞く。

 その郷里の素朴なメニューとなれば、訴求力はまずまずのはずだ。

 僕にしたところで、異国の地で牛丼と味噌汁を出されたなら、たちまち降参してしまうことだろう。


 個人的には、付け合せにクレソンがあると好ましい。

 けれども見当たらないものは仕方ない。

 まあ航海中、野菜が十分あるとも限らない。

 そう考えると、不思議というほどの事でもないだろう。

 いやそれとも、陸の上の今だからこそ、野菜を添えておくべきだろうか。

 今一度、僕は野菜の在庫を探してみる。


「――おっ」


「どうした?」


「なかなか、いい物を見つけてね」


 細い緑の、筆に似た野菜。もちろん、郷里のそれと品種は違う。

 ヨーロッパでよく見かける、野生のアスパラガス(アスパラソバージュ)だ。

 名前通りに、こちらでの扱いは山菜に近い。

 緑色の土筆(つくし)、とでも言われると納得がいくだろうか。


「これを茹でよう。じゃあ茹でる方はよろしく。サッと、30秒くらいでいい。お湯には塩ひとつまみを」


「了解」


「よろしく頼むよ」


 言って、コンロの火を確認する。

 薪は十分、火加減も強すぎるということはない。

 使い込まれ、すすけてはいるけれど、程よく手入れされてもいる。

 この分なら、何ひとつ心配はいらないはずだ。


「始まりは上々、てね」


 楽しむ状況でないことは、無論分かってはいる。

 それでも、こうして手を動かすのは気分がいい。

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