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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
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化学反応

 既に火加減は十分、そう僕は見る。

 ならば、やることはひとつだ。

 ひとつ目の香辛料(スパイス)を、まずはこの場に放り込む。


「――じゃあ、話はここまでだね」


 調理台にコック帽を置き、僕は裏口へ回る。

 そのまま、外へ出ようとする。


「――本気なのか?」


 呆気にとられた声。

 冗談だろう、そう言わんばかりの。


 この場はほとんど、ゲームに等しい。

 それも、彼我の条件が異なるゲームだ。

 負けたくないだけなら、ガチガチに防御を固めればいい。

 その状態の相手を短期間で負かすには、余程の力量差が必要となる。

 一方で、勝たねばならない状態ならどうか。


 とりつく島もない相手では、交渉はむずかしい。

 何はともあれ、反応は反応だ。

 たとえそれが、正気を疑うかのような言い方でも。

 相手に攻めさせるのも、()らす技術の内だ。


「だとしたら、私としては助かるが」


 その答えは予想の外だった。

 正直なところ、意味が分からない。


「ユーリ君が退出したとしよう」


さん(・・)をつけて欲しいね。年上は僕だ」


「――さん(・・)が去るだけでは、私は困らない」


 謎かけのつもりだろうか。

 それとも、……いや、なるほど。


「勝手な提出は困るな」


「私は困らない」


 もし僕が本気で拒むつもりなら、1時間近くを費やす必要があると言うことだ。

 この場所で、心温まる会話を1時間近く。

 もちろん、僕はまっぴらご免だ。

 問題はだから、相手の方だ。


 ようやく、一本とられたことに僕は気付く。

 そう、怪しいと言えば、先程のあの女主人も怪しい。

 人づてで渡すなら、作成者など何とでもなる。

 なってしまうだろう。


僕は(・・)困る」


「なら、どうするのかな?」


 押し黙る僕。

 どうやら、と思い直す。

 一杯食わされたのは僕の方らしい。

 スパイスを振るつもりが、空の瓶を渡されていたのは。


「――そうだね、じゃあ話を聞こう」

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