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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第二部】 1904年、フィンランド湾、クロンシュタット
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自由課題

 僕を含めた五人が、調理場につく。

 ざっと全体を見渡す。

 肉も野菜も、出ている量は申し分ない。

 各人に対し広さは十分。

 かまど5つは、たぶん増設したのだろう、内2つが真新しい。

 ひとまず、と僕は思う。

 最初からの争奪戦はなさそうだ。


――要は、小論文じゃないか。


 そう考えると、少しだけ気が楽になる。

 それなら得意な方だった。


 誰に教わるでもなく点が取れた二次試験。

 あれから十数年、頭の方は決してサビ付いてなどいない。

 ならせいぜい、点をとってやろうじゃないか。


 一から、僕はコツを思い起こす。

 書きたいことを書くだけでは、どんなに整然としていても50点。

 焦点はだから、出題側の意図を正確に読みとること。

 そして読みとった意図を、出題者側へ明示する(・・・・・・・・・)こと。

 出題者は断じて超能力者ではない。

 読みとったとして、それを記さないことにはゼロでしかない。


 小論はあくまで対話、決して自由作文ではない。

 それはそうだろう。何しろ採点が前提、つまり基準が必要なのだから。

 何でもありの異種格闘技(バーリトゥード)ではないと言うことだ。

 自由形ならクロール一択、自由の国(アメリカ)は金か才が前提。

 およそ自由と名のつくものが、本当に自由であったことなど無い。

 少なくとも、僕のいた時代ではそうだ。


――二皿の料理、一時間の制限。


 僕が出題者なら、どうだろう。

 まず、二皿は二種類作れと言うことだ。

 一種類でも三種類でもなく、二種類。

 ここまではほぼ当たり前、誰でもたどり着く領域。

 出発点から、僕はさらに一歩を進める。

 その二種類を、どうやって決めればいい?


 二種類で、出題者の意図を読み取ること。

 より正確には、こちらの読みとった意図を正確に、審査員に伝えてみせること。

 ただ、それにはいくつか、問題がある。


「よう、相棒?」


 男の呼びかけに、僕の思考は中断される。

 短髪で口ヒゲをたくわえた丸顔の、いかにも人好きのしそうな男。

 隣の、おそらくは13番の候補者、とほどなく気付く。

 審査員は……全体を見てはいるが、素知らぬ顔。

 なるほど、料理の腕以外は不問、と言う訳か。

 思わず、利きづらい左手に力が入る。

 不利でないというだけで、僕にとってはありがたい。


 ともあれ、時間が惜しいのは確かだ。

 不機嫌顔を作り、僕は答える。


「今、ちょっと忙しいんだ。おしゃべりなら、後にしてくれないかな」

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