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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1903年、シベリア、イルクーツク 12月
212/350

交錯

「結構長くなったかな――電話、そろそろ切るよ。あと何か、聞いておきたいこと、あるかな?」


 ひょっとしたら、これが最後かも知れない。

 そんな状況でのこの台詞、いかにも無粋な話だ。

 けれども、僕はほとんど確信してもいた。

 僕らの行く道は、これからまた、幾度となる交錯するだろうと。


 政府と反政府。宮廷と組織。

 僕らが互いに階段を登り行くならば、必然、そうならざるを得ない。


「特に無いわ。それで何とかやって行くでしょ。これからの連絡は?」


「一応、定期的に手紙を出す気ではいるよ。その都度の投函場所は、詮索しないでくれると助かるね」


「分かった。もう切っていいわよ」


「――ごめん、実は切り方、よく分からないんだ」


 ようやく、僕は白状する。

 格好がつかないことこの上ない。


「これ、この持ってる受話器を置けばいいのかな?」


 小型機械(スマートホン)からの固定電話への機種変(・・・)

 タッチパネルがあるでも、一台で何役を兼ねるでもない。

 固定電話はただひたすら、無骨で即物的な機械だった。

 変化としては、正直かなり刺激的だ。

 そして当分、刺激に慣れることはないだろう。

 この電話という代物は、全くもって安くはないのだ。


 無線通信のドーバー海峡横断から、まだ4年と少し。

 大西洋を横断してからは、まだ2年と経ってはいない。

 ラジオ放送に至っては、あと3年(・・・・)がかかるはずだった。


 あまりにもゆっくりな、当世の通信事情。

 けれど、これはもちろん、僕の感覚がおかしいだけだ。

 時代時代に革新があり、そのたびに感覚の刷新がある。

 電話も無線も、今の最新鋭なのだ。

 と言って個人の連絡も軍の伝達も、依然として旧来の陸路、つまり郵便物ではあるのだけれど。

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