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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1903年、シベリア、イルクーツク 12月
209/350

対戦相手

「その辺はこれ位にしておきましょ。――ところで、子供のこと、覚えてる?」


「もちろん」 


「ならそろそろ、病気だったときの対策(・・)を教えて。方法によっては根回しもあるし」


「――血、だね」


 意識的に彼女の話し方を真似、僕は説明する。

 最初に単語を提示し、惹き付けるやり方。


「血の問題は、血で解決するしかない」


「抗争の話?」


「いや、ひどく生物学的な話だよ」


 血で血を洗う抗争では、おそらくは勝てないだろう。

 僕が言うのはだから、医学上でのお話でしかない。


「つまり、これから生まれる(・・・・・・・・)皇太子はおそらく、血を固める成分を作ることが出来ない」


 遺伝子も血漿成分も、この世界ではまだ発見されていない。

 となると僕には、このくらいの言い回ししか出来ない。


「足りない成分を足す。他人の血を、定期的に皇太子へ入れる」


「――まるで中世ね」


「見かけはね。でも、そのままやると致命的になる可能性が高い。血にも合う型と合わない型があるからね。その辺だけは、おつきのエフゲニー医師に話してある。適宜聞いてみて」


 血液型もウィルスも、概念が広まるのはまだこれから。

 一からの説明よりは、断然この方が早いはずだ。


「つまり、血を供給してくれる人たちを集めるってこと?」


「うん」


「むずかしいわね」


「と言うと?」


「考えてみて頂戴。傾きかけた王朝が、人を集めて生き血を採る……怪しいなんてもんじゃないでしょ」


「――あ」


 正直なところ、そこまで考えが及んでいなかった。

 端から見ればそれは、何かしら儀式(・・)のそれに近いだろう。

 たとえば、傾いた王朝を復活でもさせようとする類の。

 客観的に見た印象は、「おしまいも近い」以外あり得ないはずだ。

 内容の方は、当たらずとも遠からずではあるのだけど。


「少なくとも、そのまま行うのは無理ね。枝葉はともかく、木の幹に傷がつき過ぎる」


 ロマノフ王朝と言う、枯れかけた樹木。

 この期に及んでの傷が、果たしてどう作用するか。

 不確か過ぎる試行は、避けるに越したことはない。

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