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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1903年、シベリア、イルクーツク 12月
208/350

安堵

公的(・・)な方? それとも私的(・・)な方?」


 よくよく、彼女は冷静だった。

 一瞬でも錯覚した僕とは、かなりの違いだ。


「――公的な方だね。私的な方は……もし、君が望むなら」


 もっとも、前者で離れるとなると、後者をともにするのはむずかしい。

 大っぴらに連絡を取り合うのは、今よりもっと、制限されることだろう。


「ユーリの方は?」


「たぶん、君と同じ考えだと思う」


「少なくとも、その部分の意見は合ったみたいね」


 互いのかすかな笑いが、目の前の受話器を通して伝わる。

 そして――短い嘆息。

 どんなときでも、ついぞ聞いたことのなかったはずの息。


勧誘(・・)、受けたんでしょ。一目置かれるのは不思議じゃない。でも、あぶない道、と言って聞く風じゃないものね。もしかしたら(・・・・・・)、私よりあなたの方が知っているはずだし」


 僕としても、特に否定はしない。

 ほとんどその通りのことだからだ。


「……僕の方は、あくまで知識としての話だけどね。まあ、そう大した規模の組織じゃないよ。今のところは、だけど」


 知らない、そう言い切るのは違う。

 けれども、知り尽くしているともまた言いがたい。

 非合法組織の実態なんて、元・不真面目学生の身には余ることだ。

 それでも。


「たぶん、怖いのだと思う」


「何が?」


 一瞬だけ置いて、僕は答える。


「君の力が」


 力。

 知恵とも知慮とも、ましてや知識とも異なるもの。

 才、人柄、あるいは神的資質(カリスマ)

 それをどう表するべきなのか、僕は今なお迷っている。


「――何て言えばいいのかな、このままじゃいろいろ、ダメな気がするんだ」


 気のせいにこしたことはない。

 それでも、このときの僕は距離を置きたかった。


「わがままなのは分かってる。どんな形になるかは分からない。けれども、力を身につけて来るよ」


 つかの間の沈黙。


「どんな形になるかは分からないけどね。僕が確かめることが出来たそのとき、また会いたい。いや、また会おう」

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