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説明
人助けを気取るには、まず当人の余裕が必要だ。
ところがこのお人好しは、賭け金に自分の命まで乗っていることを忘れていたのだった。
気付いてしまった今の僕に、そこまでの余裕はない。
何しろ明日にでも、4割で“当たる”ロシアン・ルーレットをする羽目になるのだから。
そして焦りは往々、ロクな結果を生まない。
「……ともあれ、やって欲しい“必要なこと”の中身、詳しく説明して欲しいね」
「簡単よ。あなたの来歴を説明して欲しいの」
それだけでいいのだろうか。
怪しむ気配が、向こうにも伝わったらしい。
「もっと具体的に言うわ。あなたがどこの誰で何なのか、端的に説明して欲しいの。いつまでも異国人じゃ通せない、それは分かって欲しい」
僕が平静なら、たぶん「誰に」と問うていただろう。
繰り返すようだけど、このときの僕は冷静さを欠いていた。
「……分かったよ」
少し考え、僕はうなずいた。
彼女になら構うまい、そう思った。
「ありがとう。じゃあ今週、たぶん土曜日になるわ」