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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1902年、シベリア、イルクーツク 【その2】
194/350

候補者

「――やはり」


 老人の“我が意を得たり”とする表情で。

 思い違いと見た部分が、反応を引き出してしまったと知る。


「生死をかける判断に一瞬の躊躇もない、素晴らしいことです」


 これは誤解、全くもって誤解でしかない。

 あくまで僕のいた時代では、胃潰瘍が大したことのない病気と言うだけだ。

 けれども今、老人にとっては話が違う。


 20世紀初頭。

 麻酔が発明されて日は浅く、手術そのものの歴史は浅い。

 血液型はいまだ発見されておらず、必然、いざというときの輸血もままならない。

 抗生物質の発見は、恐らく30年は後だろう。

 手術のむずかしさは、決してロシアだけの話ではない。

 夏目漱石が胃潰瘍に倒れ没するのは、今から14年後(・・・・・・・)のはずだ。


「それは……」


 生死を分ける病での、生死をかけた判断。

 もちろん、今の僕に完璧な手術ができるでもない。

 ましてや僕の出自を明かせる訳もない。

 端的に言うなら、僕にこの誤解を解く方法は、ない。


 ――これはつまり、おそらく見込まれてしまったと言うことだ。

 ただ者と済まされることがない、れっきとした革命家候補として。

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