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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1895年、グルジア
19/350

技術

 真っ直ぐ、目の前の彼女を見る。

 なだらかで、きれいな両の頬。

 ほどなく、流行り病が爪痕を残すはずの。


 小さなこの村に、満足な医療があるはずもない。

 それは必然――かつて感染した生存者を除いては――病に免疫がないことを意味する。

 何も手を打たないのであれば、神頼みでロシアンルーレットを行うに等しいだろう。

 ――そしてそれは、この僕にも言えることだ。


 致死率40%、累計死者1億人。

 そんな天然痘が滅んだのは、ひとえにWHO(世界保健機関)の推進した予防接種(ワクチン)のおかげだ。

 発生患者の隔離&治療と、周囲への予防接種。

 気の遠くなるほど地道なこの繰り返しが人の免疫を産み続け、このウイルスを唯一根絶に導いた。


 けれども、それはおよそ半世紀は後のこと。

 抗生物質も抗菌剤もまだ、地上のどこにも存在していない。

 肺結核にしろインフルエンザにしろ、この時代、感染症の脅威はまだまだ“現役”だ。


 僕のいた時代は、とうに病がひとつ滅んだ後だった。

 滅んで久しい病に、日常的な注意を払うのはむずかしい。

 詮無いことながら、廃止された予防接種をうらめしく思う。


 なんてことはない。

 どうにかできないか考えるだけで、自分の身に降りかかる可能性を忘れていた訳だ。

 これをお人好しと呼んでは、お人好しでも怒りかねない。

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