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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1902年、シベリア、イルクーツク 【その2】
189/350

分相応

 もちろん、セルゲイ氏の言わんとすることは分かる。

“決して贅沢ではない中での、創意工夫”。

 分かる範囲の褒め言葉、ということだろうか。

 悪い気はしないけど、特別に嬉しい訳でもない。

 少しだけ複雑な気分を隠し、僕は言う。


「――ありがとうございます」


「紅茶にもよく合いますな。もう一枚、いいですか」


「ええ、どうぞ」


 お菓子作りは、あくまで僕の趣味だ。

 比較的安価な全粒粉小麦粉を使ったのも、控え目な材料を使っているのも。

 それを、ただ店が開いていないから、来客に振る舞ったに過ぎない。

 ――それでも。

 少なからず、僕は失望していることに気付く。

 僕の望みを外していたことに。


「まだ缶いっぱいにありますから」


 流刑の果て、シベリアに居続ける老革命家。

 おそらくは、微妙な味とは縁遠かったことだろう。

 当たり前と言えば当たり前の話だ。

 それでもその当たり前を、どうにも僕は受け入れることが出来ない。

 たかがお菓子、それはその通りなのだろう。

 そんな自分の心の狭さに、僕は困惑するしかない。

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