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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1902年、シベリア、イルクーツク 【その2】
188/350

別問題

「では、ひとつ頂くとしましょう」


「ええ、どうぞ……いや、失礼、まずは僕から食べましょうか?」


 これは半分冗談だ。

 自分用のクッキーに何か(・・)を入れるはずもない。

 けれども敵意のないことを示すには、先に食べることがちょうどいい。

 老革命家は小さく笑い、それに答える。


「お気持ちだけで、もう十分ですな。頂きましょう」


「ありがとうございます」


 僕と老人、ほぼ同時にクッキーに手を伸ばす。

 ほどなく、噛み砕くさくさく音が部屋に広まる。

 シナモンの匂いと小麦粉の香ばしさ、ほのかなバターの甘い匂いも。

 焼きたてではないけれど、なかなかの状態だ。

 ひとしきり噛み締め飲み込むと、辺りに静けさが戻る。


「……いけますな」


 その言葉に、思わず笑みがこぼれる。

 たとえ僕が満足していても、他人の口に合うかどうかはその人次第なのだから。


「いや、気に入って頂けてよかったです」


「決して贅沢な材料ではないでしょう。バランスがいい、控え目な甘さもにくい」


 これはたぶん、僕が使った小麦粉から判断したのだろう。

 バターもスパイスも、贅沢品でこそないけど安物でもない。

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