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力への意志
力。
誰もが決して、その力を活かせるとは限らないもの。
――そう、たとえば、こんな数字を並べたとしよう。
9 16 25
足し算となる(9+16=25)のはすぐに気付く。
平方数の和(3・3+4・4=5・5)もむずかしくはない。
では、これを三角形での話とするとどうだろう?
すなわち、「直角三角形における対角線の二乗は、他辺の二乗の和に等しい」。
同じ数字であっても、見えるものがまるで違うこともある。
無論、僕(と同時代の人間たち)にとってこれはほとんど暗記の範囲だ。
単なる暗記で、苦闘の蓄積を飛ばし、結果を知ることができる。
できてしまう。
「可能そう」と「可能である」との違いは果てしなく大きい。
そう、別段、何かの原理に通じている必要はないのだ。
未知であるはずのそれが、成功に至る道であったたなら?
あるいは、確実な失敗への道を避けられるとしたら?
知識は力だ。それは間違いない。
おそらくは、思われているよりもずっと大きな。
――どうやら、僕は気付いてしまったのかも知れない。
ひょっとしたら、あまり気付かなくてもいいことに。




