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分不相応
同志。
ジョゼファのことを、仮初めにそう言ってもいいはずだ。
けれども。
僕と彼女は、果たしてどんな志を同じくしていると言うのだろう。
僕に志は、いや、願望はある。
この先に待つ悲劇を止めること。
処刑、二度の大戦、粛清を。
引いては、たくさんの人を救うことだ。
一方で、どこかささやくように、こんな声が聞こえもする。
(――本当にそれだけか?)と。
(――それ以上を望んでいるんじゃないのか?)。
(――たくさんだなんて、そんな曖昧なことに何かを賭けるのか?)
あるいはこれが、魅惑という奴なのだろうか。
力。
まだ手に入れてすらいない力の。
普通の人間が分不相応の力を得たのなら、単に溺れるだけで済む。
巻き添えもせいぜい、数人程度の規模だろう。
でも。
その先に踏み込みかけ、つかの間、僕は身震いを覚える。
力と才。
手ひどい分不相応は、出来心で済むことじゃない。




