182/350
同志
「なるほど、いろいろ複雑なようですな」
僕はうなずき、言葉を返す。
「ちょっとうまく言えませんが、ジョゼファが大切な女性であることに変わりはありません」
「――たとえば同志のような、ですかな?」
その問いかけは、僕に迷いを生む。
……どうなのだろう。
ひとまず彼女の方にとってどうなのか、今は置いておこう。
それはほとんど、僕に察せる範囲をこえている。
友人でもなければ恋人でもない。
むろん兄妹でもない。
僕にとっての彼女。
あるいは……同志。
老人の使う同志が、果たして何を意味しているのだろう。
共産主義者の使う同志。
赤の他人の、けれども信条上の絆で結ばれた者、とでもとればいいのだろうか。
少なくとも、老人にとってはそうなのではないか。
「――ええ。きっと、おそらくは仰る通りです」
一息に、僕は続ける。
「ジョゼファは僕が誓うに値する名前です。それは確かだ、間違いありません」




