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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1895年、グルジア
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裏側

「別にむずかしいことじゃないの」


 前置きと分かってはいても、その言い回しが今はわずらわしい。

 だから、僕はこう述べる。


「それなら、率直にお願いできないかな。大切な午後の作業もあるし、ね」


 作業があるのは本当だ。それが大切なのも。

 実りを迎えた、収穫の秋。

 冷蔵庫も車もない時代にとって、それは特別な意味を持つ。


 鉄道敷設による、古典的な――一定地域内のみの不作による――飢餓の消滅からは、まだほんの数十年。

 恩恵を受けているのは、都市とその周辺に限られている。

 食べ物が当たり前になっていくのは、まだこれからのこと。


 この町にしてもそうだ。

 馬車と人手だけでは、いざと言うときの備えに十分とは言いがたい。

 ゆえに、毎年の冬支度が重要になる。

 ジャムもワインも、はたまたキャベツの塩漬け(ピクルス)も、冬では日常の食べ物だ。

 冬は、生鮮野菜のありがたみが身に染みる季節でもある。


 食卓が交通と保存の結晶だなんて、以前は思いもしなかったことだ。

 存在することが当たり前なとき、存在しない時のことを痛感するのはむずかしい。

 おそらくは、その逆も然りなのだろうけど。


 ……ここまで考えて、僕は気付く。

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