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宣誓
「どうでしょう、私から先に何かをすると言うのは?」
その言い回しには、若干の含みがある気がした。
「何かする、ですか?」
言外に、何か答えるではなく、との意を込めて。
きわめて穏やかに、老人は頷く。
「その通りです。もっとも、あまりご無体なことどもならば、ご遠慮頂きたいものですな」
「――まあ、質問には質問で返すべき、なんでしょうね」
「正直なところ、それだと助かりますな。もっとも、この老体に話すことがあれば、ですが」
話せることならば話す、と言うことなのだろうか。
僕が聞いてみたいのは、どちらにしろ真偽が分かる話ではない。
ならば、確認すべきことはひとつだ。
「分かりました。まず僕が聞く、あなたが答える。あなたは答えることも有れば、押し黙ることもある――それでいいですか?」
「構いません」
「では、誓って頂けますか?」
儀礼的な言い回しであるのは招致の上だ。
けれども僕には、確信があった。
老人が誓いを違えないであろう、奇妙な確信が。
「主に誓って、偽証を成さないことを」




