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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1902年、シベリア、イルクーツク
172/350

母と娘

 玄関口まで出て、僕はドアノブに手をかける。


「はい、どちらさまですか?」


「――ツヴェターエワです。そちらにマリーナはお邪魔してませんか?」


 取り立てて高くもない、静かな女性の声。

 そこまで聞いて、僕は鍵を解いてドアを開く。

 短髪の中年女性。他でもない、マリーナの母親だ。


「おはようございます。ええ、いますよ」


「ああどうも先生。本当にもう、済みませんねえ……」


「いえいえ。セルゲイさんと二人で、にぎやかになってたところです。――っと、ここでは寒いでしょう、ひとまず中にどうぞ」


「いえ、それには及びませんよ。――マリーナ!」


 よく通るいい声だった。

 慌てた様子で、ぱたぱたとマリーナが駆けつけてくる。

 口の端にはジャムがついたままだ。


「なあに?」


「何じゃないですよ、朝から。お勉強の日にちはもう少し先でしょう」


「でもジャム、おいしかったよ?」


 これには思わず笑いがこぼれた。

 もっとも、それは僕だけだったのだけど。


「あまりたびたびお邪魔するもんじゃありません。本当に済みませんねえ先生」


「いえいえ、賑やかなのは歓迎ですよ」


 少なくとも、これは本心だった。

 とうに父母の亡い僕には、もう縁のないやり取りなのだから。

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