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好み
各々、自分のスプーンで取り分けたジャムを口に運び、紅茶を口にする。
セルゲイ老人はオレンジ皮のジャム、すなわちマーマレードだ。
黙々と、紅茶とジャムを交互に口に運んでいる。
僕も試したことはあるけど、あの皮の苦味が好きではなかった。
もっとも、パンと合わせるのは平気だから、あくまで紅茶と合わせるのが好みじゃないだけだ。
マリーナは……紅茶に砂糖を入れすぎたせいか、そもそもそこまでジャムを取っていない。
イチゴジャムとブルーベリージャムとを、少しずつ皿によそっている。
たぶん、マーマレードの苦味は好きでないのだろう。
僕はと言うと、イチゴジャムが一番の好みだ。
果実の甘さと、わずかながらの酸っぱさ。
そして時折混じる、小さなイチゴの種の感触。
いずれも、紅茶とよく合う。
物珍しいものもいろいろ試してはみたけれど、紅茶に合わせるのはイチゴジャムと決めている。




