表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1902年、シベリア、イルクーツク
169/350

安息日

「じゃあマリーナ、ジャム瓶を開けてもらえるかな? ――ああ、開けるだけでいいよ。取り分け用のスプーンはそこに」


「うん」


 無言でセルゲイ老人もそれに続く。

 食卓の上には、あっと言う間にふたの開いたジャム瓶3つ。

 ほどなく、ほのかに甘い匂いが広がっていく。

 冬では貴重な、果物の匂いが。


 ……僕にしても、瓶あけくらい出来なくはない。

 でも自由の利きづらい左腕では、端的に面倒だし、時間もかかる。

 人に頼れるときは人に頼る。

 今は幸い、その()に不自由はしていない。


 そこまで考え、僕は思う。

 ジョゼファがこの地にいない。

 それがさびしいのは、否定しがたい事実。

 でもこんな関係も、決して捨てたものではないのかも知れない。

 たとえそれが――ひどく一時的な――僕がシベリアを去るときまでの食卓だとしても。


 これを安息、と言えばいいのだろうか。

 少しだけ、僕は穏やかな気持ちになる。

 この平穏が続くためならば、祈りのひとつも捧げていいくらいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ