心弱り
賑やかさの合間の、不意の孤独。
ほんの少しだけ考えて、僕は察した。
これこそが、人をなにがしかの片隅に追いやる衝動――すなわち、心弱りなのだと。
「……どうしたの?」
食事の手を止めた僕を、マリーナがのぞき込んでいる。
どうやら思ったよりも、物思いにふけっていたらしい。
「ええっと……その」
どうしたものだろう。
大丈夫、などと言って誤魔化せるとは思えない。
いざ自分の番になってみると、うまく返すことが出来ない。
僕は否応なく、当事者であることを自覚させられる。
ときに讃えられ崇められるような立場が、こうも忌まわしいものだとは。
「誰しも、ぼうっとするときもあるさ。――そうだろ、ユーリさん」
助け船を出してくれたのは、マリーナの横に座るセルゲイ老人だった。
あるいは何かを察してくれたのだろうか。
ともあれ、この場での助けには違いない。
僕は急速に、落ち着きを取り戻していく。
「――ええ、そうですね。ごめんねマリーナ、心配かけたかな?」
「うん」
返事の素直さに、僕は苦笑する。
子供にも分かる隙とまでは、いろいろな意味で思いたくない。
「いや、申し訳ないね。もう大丈夫だから」
これは本心だった。
案ずることはないはずだ。
この団らんに、今は浸っていればいいのだから。




