賑やかさ
マリーナの手伝いもあって、無事に暖炉の火は勢いを増していく。
「――うん、火はいいかな」
ようやく、朝の準備らしくなる。
ポトフの加熱。
紅茶用の水の沸騰。
そして黒パンの焼き直し。
準備が進むにつれて、室内も自然、暖かさを増していく。
「私にできること、何かありますかな?」
「そうですね……では、ポトフの鍋運びをお願いできますか。手袋は暖炉の隣に置いてあります」
「分かりました」
老人が立ち上がると、食卓に残るはマリーナ一人。
わくわくすると言った表情でこちらを覗き返している。
よく見るまでもなく、“何かできることは?”との目だ。
……この目には、どうしても弱い。
「じゃあマリーナは、黒パンをとってもらえるかな。暖炉の横に火ばさみがかけてあるから、それを使ってお皿に。火には気を付けて」
「うん!」
ぱたぱたと、台所に向かう足音。
――時間差で頼めばよかったかな。
そう一瞬思ったけど、ちょうど入れ替わりだった。
「あとは、どうしましょう?」
「では、ジャム瓶を開けておいてもらえますか? 僕は紅茶のお湯をとってきます。淹れ次第、朝食にしましょう」




