来賓
いつもよりわずかに早足で、僕は玄関にたどり着く。
そしてゆっくり扉を開け、外の待ち人を中に招く。
「――どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「おはよう!」
予想外だったのは、もうひとりが居たことだ。
十代にようやく届いたばかりの女の子が。
寒さなど存在しないとばかりの、ごく普通の冬着で。
……いつもながら、温度感覚はどうなっているのだろう。
「お、おはよう、マリーナ……次に勉強教えるはまだ先の」
「びっくりしてるけど、どうしたの? 大丈夫? どこかわるい?」
「……い、いや、基本的には大丈夫だよ……」
乱入者一人がいることを除けば。
決してきらいな訳ではない。
きらいではない、のだけれど。
「なら大丈夫ね! お邪魔します!」
きらいではないけど、苦手なタイプというものはあるのだった。
すがるように、僕は老人に目を向ける。
穏やかな顔で首を振られて、僕はほとんどを察した。
老人にしても、予想外ではあったのだろう。
お互い、この年頃の子を制止できるほど子育てに縁はない。
「……まあ座ってて下さい。紅茶カップ、もうひとつ持ってきます」
それと、角砂糖の瓶も。




