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ジグザグ
ともあれ、そろそろ起床の時間だった。
「――ん」
目を覚まし、ベッドの正面、柱時計に目をやる。
朝の8時過ぎ。
日の出までにはもう少し時間がある。
隣室にある石製ストーブ&コンロの残り火のおかげで、室内の気温は下がり切っていない。
せいぜい15,6度と言ったところ。まずまずの暖かさだ。
ロシアの冬は寒くない。少なくとも、まともな室内なら。
……とは言えもちろん、毛布の中より暖かい道理はない。
「……よし」
思い切って毛布をのけ、起きあがる。
ほんの少しの後悔。
何はともあれ、ペチカに薪を足さないといけない。
薪は――そう言えば、室内のそれは切らしているんだった。
「昨日買いに行けばよかったかな」
そうつぶやいてみても、燃料が増える訳でもない。
諦めて、僕はコートを羽織り、外出に備える。
午前8時。日の出まであと少し。
ざっと、マイナス20度と言ったところだろうか。




