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グラーク
今のところ、収容所は……いや、流刑の身は悪くはない。
なぜか。平たく言えば、手を回したからだ。
シベリア行きそのものは、回避しようと思えばできたようだ。
けれど、僕はそれを選ばなかった。
流刑を回避せずに、別の待遇を選んだのだ。
貴族扱いであれば、住居と生活費は支給される。
労働囚でないため日々の労役もない。
そして何より、取り消しよりも法を曲げないで済む。
ある意味で「貸し」と言えなくもない。
意図はもうひとつある。
流刑はもちろん、体制がこのままなら邪魔な経歴でしかない。
けれども、それ以外ではどうか。
その場合、流刑の事実は勲章に等しいものとなるだろう。
王家の継承者のためには、血友病の知識を持つ僕がどうしても必要だ。
生まれてくる子が無病とは限らないのだから。
早い話が、向こうから縁を切ってくるとは考えづらい。
だからこのシベリア行きは、僕にとっては保険のようなものだ。
現状が、どちらに転んでもいいような。




