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武器
「心にとめておくよ……ところで、さすがにそろそろ寝ていいかな?」
午前10時、つまり日が出てすぐ起きるとして。
昼下がりまでの出頭には、かなり慌ただしい。
寝る前の準備を考えても、ギリギリな睡眠時間だ。
ともあれ、何とか午後4時、日の入りまでには帰れるといいな、と思う。
帰れるかどうかは、ほぼ運次第だろう。
でもどうせ運次第であっても、運以外の要素を埋めるにこしたことはない。
何があるか分かりづらい以上、しっかり寝て頭を冴えさせるのは重要だ。
僕の武器はそう多くない。
だからこそ余計に、可能な限り研いでおく必要がある。
「あ、そうだ――もし、僕がそのまま戻らなかったら、今日、打ってた文章を渡しておいて欲しい。宛先は読めば分かるよ」
あの書類を渡せば、当面の用はおそらく足りる。
僕がいなくても、しばらく支障はないはずだ。
「もちろん、そうでないことを祈りたいけどね」
誰に、とまでは言わなかった。
僕にだって、祈りたくなることはある。
たとえそれが、当て所ない祈りだとしても。




