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冗談半分
仮に、彼女がその気を出してしまったらどうか。
待ち受けるのはおそらく、半ば宗教的な支配だろう。
何かから授かったかのような、彼女の洞察。
その力を以てすれば、人の上に立つなど容易いことのはずだ。
ほとんど怪僧にでもたぶらかされるような支配。
……怪僧? いや、まさか。
不意の想像を、僕は振り払うことが出来ない。
「もし本気で言ってるなら――」
そうなら僕は、いったいどうすればいいのだろう。
幸いその先を口にする前に、助け船は来た。
「――冗談よ」
何もなかったかのように、彼女。
腹が立つより前に安心してしまう。
そんな自分が、少しだけにくい。
よくよく、今日は振り回されっぱなしだ。
「……心臓に悪いって」
「そっちが黙ってた分の利子。大まけにまけたと思って」
……と言うことは、元本はまだなのだろうか。
何となくこわいので、ひとまず触れずにおくことにする。
「でもね、ユーリ。やっぱりあなた、甘いと思うわ」
何度となく聞いた言葉が、一段と痛い。
相も変わらず、その通りだからだ。




