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一知半解
「ごめん。確かに、君のことで隠し事してたよ」
いざ、うなずいてはみたものの。
どこまで打ち明けるべきか、まだ僕は迷っていた。
血塗られた魔女。
全ロシアを支配した鋼鉄の女。
それが、かつて彼女が辿るはずの道だった。
少なくとも、僕のいた時代ではそうだ。
仮に僕がそう言われたらどうなのか。
ほんの少しだけ、考えてみる。
――あなたは後の世の赤い皇帝です。
――地位についてからは、ひたすらに恐れられました。
――ちなみに治世中に数千万人が死にました。
……大仰すぎて、実感に乏しい気もする。
どうしたものだろう。
正確には、どんな風に打ち明けたものだろう。
いつも難題を相談できるはずの相手が、今日は対戦相手と来る。
むずかしい、あまりにむずかし過ぎる。
ほとんど思いあまって、僕は言う。
「――何から聞きたい?」
以前に、これからの大まかな歴史は告げていた。
なのでこの言葉は、こんな意味だ。
――きちんと答える、と。




