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交代作用
「……いや、それはさすがにダメだね」
まかり間違っても、彼女をシベリアに行かせるような真似は。
知られざる火薬庫の中に、火花を投じるようなものだ。
「僕のことは、僕の方で何とかするよ」
無論、女の身で流刑地なんかに行かせられないことは大前提として。
シベリアで死ぬことは恐らく、ない。
ならば、そこで起こり得ることは何か。
ほぼ間違いなく、同時代の政治犯との接触だ。
これはたぶん、相当にまずい。
なぜならこの時代の政治犯とは、僕のいた世界で言うところの、革命勢力に他ならないからだ。
――革命を束ね、全ロシアを支配した血塗られた魔女。
ジョゼファから鉄の女への火種が、こんなところに埋まっていようとは。
僕が甘かった。けれども何とか、事前に気付けてよかったと思う。
思わず、ひとり僕はつぶやいていた。
「火花、か――」
まったく、どこに何が埋まっているか分かったものじゃない。




