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一喜一憂
「正解ね」
――つまるところ、こう言う事だ。
たかだか数十年で、ある地域が激変することはほぼあり得ない。
少なくとも天候の面ではそうだ。
けれども、それ以外の面ではどうだろう?
19世紀半ば、カリフォルニア州のゴールドラッシュ。
まさに今年起こるはずの、テキサス州の石油ブーム。
天候以外の要因でなら、環境はいくらでも変化し得る。
そしてシベリアなら……たとえば治める側、運営者の交代があったなら?
「――そうか、シベリアの僕のイメージは」
「あくまでも日本のもの……それも、50年近く後の時代のものでしかない」
愛読していた先人たちが間違った訳ではない。
ただ僕が、未来のイメージに引きずられただけだったのだ。
うって変わって、少なからず僕は安堵する。
彼女がわざわざ指摘すると言うことは、つまりそう言うことだからだ。
むざむざ無駄死にに行くような選択肢なら、直接止めればいいだけのこと。
けれども、――なぜだろう、どうにも何かを見落としている気がする。




