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食前食後
少しつぶれたみかんを食べ終わり、あらかた食卓が片づく。
後は飲み物を残すだけの、穏やかな食後。
「ユーリは残りのシャンパン、どうする?」
「ジョセファは飲むんだよね?」
軽くうなずくのを見て、僕は答える。
「僕ももらうよ」
あらためて、グラスは赤い液体で満たされていく。
いつもなら紅茶とジャムを用意するところだけど、さすがに今日はない。
ティースプーンですくった浅煮ジャムをなめながらの濃い紅茶は、冬ならではの格別な味なのだけど。
好みによっては、浅煮ジャムにウォッカやブランデーを垂らしてもいい。
僕はと言うと、イチゴジャムとブランデーを小さじ一杯ずつ混ぜたものがお気に入りだ。
……まあ、それはともかく。
「――じゃあ、そろそろ」
「始める?」
「うん」
考えをまとめる時間は、それなりにあった。
そのためのインターバルであり、食事時間でもある。
「とりあえず、僕の方からいいかな?」
「ええ」
長かった12月31日の夜も、ようやく終わろうとしていた。




