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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1901年、サンクト・ペテルブルク
132/350

普段

 あらためて、サラダをフォークで口に運ぶ。

 角切りじゃがいも・にんじんの歯応え、マヨネーズのまろやかさ。

 炒めた豚角肉からこぼれる肉汁。

 そして後味、かすかなピクルスの酸味。

 ありふれた材料からつくられる、複雑なおいしさだ。

 個人的には練りからしも入れてみたくなるけど、この場に無いものは仕方ない。

 マスタードは……合うことは合いそうだけど、酢が入っている分だけ辛さはやわらかい。


 イクラのオープンサンド。

 黒パンの酸味にバターの甘さ、イクラの塩味がよく合う。

 故郷のイクラに勝るとも劣らない、贅沢な味。

 もし乗せるのが、醤油漬けだとどうだろう?

 試せる機会があったら、試してみたくなる。


 黙々と、僕たちはフォークと手を動かしていく。

 食事が淡々と進むのは、いつものことだ。

 目の前に何かが差し迫っていてもきちんと食事をするのは、それが普段通りの行動だからだ。


 健全な精神は健全な肉体に宿る――若干の皮肉と共に、そんな言葉も思い出す。

 健全、の定義はひとまず置くとして。

 仮にそう信じるなら、左腕の自由が利かない僕は、どう転んでも健全でない精神の持ち主と言うことになる。

 一切信じていないし、決して信じる訳にもいかない考えだ。

 健全な精神は、健全な肉体に宿るとは限らない。

 けれども、こうは言える。

 冷静な精神は、冷静な行動――普段通りの手順に宿るのだと。


 どんなときでも、普段通りに食事をとること。

 これもまた、備えの一形態。

 ……もっとも今日に限って言えば、心持ち食べ方が早くなってはいるのだけれど。

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