あいづち
何はともあれ、僕ら二人は食卓につく。
「――いただきます」
僕一人、手を合わせ日本語でつぶやく。
この世界に飛ばされて7年近く。
結局、この習慣はまだ残っている。
「どうぞ、召し上がれ」
もちろん、こちらの“いただきます”に相当する言葉はない。
けれども、相づちにできそうな言葉ならある。
食事時、いつしか僕らは言葉を重ねるようになっていた。
シャンパンを開け、互いのグラスに注ぎ合う。
最初の一杯は一気に飲み干すのが、この辺りでの習わしだ。
なので、ウォッカを出されると僕はかなりつらい。
彼女の方は、まったくもって平気みたいなのだけど。
ともあれ、新年がシャンパンなのは正直ありがたい。
「じゃあ、取り分けようか」
大皿に盛ったサラダを、僕はふたつの小皿にうつす。
角切り茹でにんじん・じゃがいも・ピクルス、そして好みの肉をたっぷりのマヨネーズであえた料理――オリヴィエ・サラダだ。
フランス風の人名から分かる通り、数十年前にフランス人シェフが考案してから広まったのだとか。
新年のシャンパンと言いサラダと言い、どうにもフランスを身近に感じる。




