一時解放
路地の角を曲がり、歩きながら耳を澄ます。
一度、半歩だけ歩調をずらし、自分以外の足音を確かめる。
ひとまず、ついてくる気配はない。
「――っ」
ようやく、僕は本当に息をついた。
正直あぶないところだった。
冬で良かった、と心底思う。
空気が凍てつき、鼻も利きづらくなる冬で。
みかんの紙袋は、持っていた部分が少し濡れている。
みかんの甘い匂いは、何かを察するに十分だ。
あるいは彼らにもう少し注意力があったなら、おそらく見抜かれていただろう。
「運が味方した、かな……」
彼らへの評価はそのままだ。
可もなく不可もなく。
あの状況、わずかな材料から虚勢を見抜け、と言うのは酷だ。
……いや、今となっては、もうどうでもいい。
深夜、花火の本数は徐々に減っている。
時刻は0時半と言ったところだろうか。
一瞬だけ背後を確認し、僕は家路を急ぐ。
あの場を退けても、本命の場がまだ残っている。
実際の取り調べはどうか。
刑期その他の相場は。
もし妥協するとしたら。
さすがにこればかりは、僕一人の手に余る。
新年早々、相方に相談する羽目になるとは思わなかった。
「……早々にいい年だね、まったく」
誰かのカンなんて、当てにするものじゃない。




