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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1901年、サンクト・ペテルブルク
127/350

一時解放

 路地の角を曲がり、歩きながら耳を澄ます。

 一度、半歩だけ歩調をずらし、自分以外の足音を確かめる。

 ひとまず、ついてくる気配はない。


「――っ」


 ようやく、僕は本当に息をついた。

 正直あぶないところだった。


 冬で良かった、と心底思う。

 空気が凍てつき、鼻も利きづらくなる冬で。

 みかんの紙袋は、持っていた部分が少し濡れている。

 みかんの甘い匂いは、何かを察するに十分だ。

 あるいは彼らにもう少し注意力があったなら、おそらく見抜かれていただろう。


「運が味方した、かな……」


 彼らへの評価はそのままだ。

 可もなく不可もなく。

 あの状況、わずかな材料から虚勢を見抜け、と言うのは酷だ。


 ……いや、今となっては、もうどうでもいい。

 深夜、花火の本数は徐々に減っている。

 時刻は0時半と言ったところだろうか。


 一瞬だけ背後を確認し、僕は家路を急ぐ。

 あの場を退けても、本命の場がまだ残っている。

 実際の取り調べはどうか。

 刑期その他の相場は。

 もし妥協するとしたら。

 さすがにこればかりは、僕一人の手に余る。


 新年早々、相方に相談する羽目になるとは思わなかった。


「……早々にいい年(・・・)だね、まったく」


 誰かのカンなんて、当てにするものじゃない。

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